港で積み込みの手続きなどしておりますと、
ごくたまにお声をかけられる事がございます。
ココをご覧下さっている奇特な…もとい、ステキな方々なのですわ。
突発に弱いワタクシですので、ろくなお返事出来ませんけれど有難うございます。
ところでその時、必ず
「
アン・コギーさんによろしく」
と言われるんですが、皆様激しく勘違いされておりますわ。
ワタクシと、あの飲んだくれ女は憎みあいこそすれ、「よろしく」な仲ではございません事よ。いい加減決着をつけなければいけないと思うんですけれど、臆病女は怖がって港の仲に篭もったきり。
やはり航海者同士、決着は海上でつけるべきかと思っていたんですけれど、ここは乗り込んで
酔っぱらいを海に投げ入れるくらいはした方がよろしいかしら…。
そんなわけで。
酒場に乗り込んでみますと、見慣れた男がカウンターを一生懸命磨いておりましたの。
「あら。アナタ、確か…」
赤毛女の副官でしたかしら、ホセとかいいましたわね。
ホセはどことなく、やつれていて元気もなさそうです。
「えっと、華子さんでしたっけ…いつも船長がお世話になっておりやす」
「お世話というか、迷惑ですけれどね。
まあ、アナタに罪がある訳じゃございませんからどうでもいいですわ。
ところで、アノ女はどこですの?」
「船長…」

呻くように呟いた後、突然ホセはボロボロ泣き出しました。
まあ、大の男がなんて泣き方するんでしょう、とワタクシは呆れたのですけれども、放って置くわけにもまいりません。とりあえず、落ち着かせるために座らせて一杯奢ってやることにいたしました。
「すんません。みっともないところを…」
「まったくですわね。それで?一体どうしたって言うの」
ホセは急に口をつぐんで、固い表情になります。
「奢ってもらってありがたいんですが、コイツはうちうちの事情ってやつで、人様に話すような事じゃ…」
「何、急に人情物みたいな事言っているの。大体察しがつきますわよ」
ワタクシは思わず腕組みしておりました。
「どうせ足りない酒代の代わりの労働でございましょ」
「うッ」
「図星のようですわね。
ついでにアナタの船長とやらは
勘定をアナタに押しつけて逃亡したのね」
「い、いや船長は…か、金都合しに行くって出ていったんでさ」
「アナタも懲りない方ね。戻ってこないのは薄々感じているクセに。まあ、帰ってきてもかなり後。せいぜい勘定のめどがつく頃ね」
「…うぅ…」
全く、困った船長とそれに振り回される情けない船員ですわ。
(ソレはソレで、お似合いなのでしょうけれど)
「それで?勘定はおいくらなの?」
「は?」
「ここは、立て替えてさしあげますわよ」
「はっ…な…なんと?」
「アナタのような、気の利かない大男が皿洗いで返してたら何年かかるか判ったものではございませんわ。それよりは、海上に出てお稼ぎなさいな」
「い、いや…でも」
「船長にではなく、アナタにお貸しするのですわ。船長からきっちり回収してワタクシに回してくるのが筋ですけれど、どうせそんなこと出来ませんでしょ。まあ、給金から少しずつワタクシに返してくださればいいわ…
…いえ、そのお金は差し上げましょ。」
「うへっ。それは有り難いですが。でも何で」
「それはね」
ワタクシは微笑みました。ホセが一瞬怯えたような顔をいたしましたから、微笑んだようには見えなかったかもしれませんが。
「近々、ワタクシがあなた方のを船を沈めるからですわ」
「だから、そうね。慰謝料の前払いってところかしら」
⇒ シュウノスケ (01/23)
⇒ 華子 (01/21)
⇒ アン (01/19)
⇒ ビードロ (01/19)
⇒ かぬへる (01/19)
⇒ 元航海士 (01/18)
⇒ 元航海士 (01/12)
⇒ ビードロ (01/04)
⇒ フェルマー=ディック (12/05)
⇒ 華子 (11/29)